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トラウマからの解放は記憶の上書き |
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記憶するという事を考えてみましょう。先に「脳が記憶する映像は?」で述べましたが、脳が記憶する内容は必ずしも目の前の現実ではありません。 極端な場合目の前の光景と全く違う内容を記憶してしまう場合もあります。少し違うと「思い違い」としてかたづける場合も多いですね。
眼球を動かすと脳は目から情報が入ってくるものと認識し、海馬への一時記憶を開始します。 いきなり大脳皮質に記憶が開始される訳ではないのです。このとき海馬と共に扁桃体も活動します。
左右への眼球運動の一番の目的は、草原に降り立った人類の生存のためです。餌になる小動物を見つけたら捕獲のために駆け出します。 捕食者を見つけたら瞬時に身を隠します。餌をとるのは危険を伴わないので扁桃体は喜びの情報を付加します。
捕食者を発見した場合は回避行動のための情報を付加します。同じ状況が起きたら瞬時に回避行動をとれるようにするためです。
こうして海馬に一時記憶された情報は睡眠時にもう一度思い返され大脳皮質の記憶野に移動されて永続記憶になります。 眼球が激し動くレム睡眠時に記憶の確認と移動が行われているものと思われます。生命にとって重要でない記憶は大脳皮質に弱い情報として記憶され、時間と共に消えていきます。
ところが危険と判定された情報は扁桃体情報と共に大脳皮質にしっかりと格納されます。生き延びるために。
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扁桃体情報と共に記録 |
危険と判定された情報は扁桃体情報と共に大脳皮質にしっかりと格納されます。 |
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恐怖記憶は扁桃体が関与 |
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生命は生き延びて子孫を残すことが目的で生きています。
生命が誕生してから38億年、生き延びるために気の遠くなるような時間の中で、世代の交代を続けて来ました。
今から600万年前に誕生した人類は、何の武器も持たなかったので、危険をいち早く感知し即座に身を守る行動をとるという機構を脳の中に作りました。それが扁桃体の一つの重要な役割です。
草原を食糧確保のため徘徊している人類は突然猛獣などの捕食者に命を奪われかねません。獲物探しは無駄な動きで存在を悟られないように、もっぱら目を左右に動かすだけです。
思わぬ所に捕食者が現れたらその状況を脳は危険と判断し、扁桃体が危険情報を付加して大脳皮質に伝えます。もし、同じ状況が発生すれば身体は反射的に身構えることが出来るのです。
身に危険が及ばない情報は扁桃体の付加情報は無く、同じ記憶であっても扁桃体情報が付加されたものとそうで無いものがあるのです。
平常時に身体の変調を引き起こしているのは、この扁桃体情報が付加された記憶だと考えられます。
幼少期に虐待を受けたとか、大災害に遭ったとか、成人になってからも逃げるに逃げられない状況に置かれ続けたとか、猛獣に食われるほどの危険は無いにしても、本人にとってはそれと同等な感覚になったとしてもおかしくありません。本来自分の身を守る働きがかえって自分を苦しめるとは何ともやりきれない思いです。
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扁桃体は生き延びるため |
扁桃体が情報を付加するのは生命が生き延びるたに作りあげたすばらしい機構です。しかしそれが徒となる場合があるのです。 |
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記憶は置き換えられるのか |
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脳科学の問題ですが、私はEMDR療法の発見によって記憶の置き換えが可能になるのではと考えるようになりました。
脳は部位によって働きがほぼ決まっているようです。同じ内容が複数の部位に記憶されているとは考えずらく、過去に記憶した内容と同じものを再度記憶する場合、過去の内容の上にそのまま書き込まれると考えられます。
同じ内容を脳の他の部位に記憶しなおすことはほぼ不可能でしょう。脳に余分な負担をかける必要が無いからです。
学生が受験勉強で科目の学習をするとき、反覆学習をすることによって忘れにくくなることは周知の事実です。この場合も反覆学習の度に脳の新しい部位に記憶されるのではなく、ニューロンがよりつながりやすくなるという事です。
トラウマをもたらす記憶も思い出す度に記憶回路が太くなり、トラウマによる症状の改善は望めません。これが治療の障害になっている点です。
思い出す度に悪のループが太くなる、このループを断ち切るには向精神薬などの薬物療法が有効だとされてきましたが、私の知人の例では一時しのぎの対症療法に過ぎないようです。
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記憶は上書きされる |
脳は働く場所が決まっている。同じ内容は同じ場所に記録されると考えられる。 |
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睡眠時に永久記憶される |
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記憶するという事を考えてみましょう。先に「脳が記憶する映像は?」で述べましたが、脳が記憶する内容は必ずしも目の前の現実ではありません。極端な場合目の前の光景と全く違う内容を記憶してしまう場合もあります。少し違うと「思い違い」としてかたづける場合も多いですね。
眼球を動かすと脳は目から情報が入ってくるものと認識し、海馬への一時記憶を開始します。いきなり大脳皮質に記憶が開始される訳ではないのです。このとき海馬と共に扁桃体も活動します。
左右への眼球運動の一番の目的は、草原に降り立った人類の生存のためです。餌になる小動物を見つけたら捕獲のために駆け出します。捕食者を見つけたら瞬時に身を隠します。餌をとるのは危険を伴わないので扁桃体は喜びの情報を付加します。
捕食者を発見した場合は回避行動のための情報を付加します。同じ状況が起きたら瞬時に回避行動をとれるようにするためです。
こうして海馬に一時記憶された情報は睡眠時にもう一度思い返され大脳皮質の記憶野に移動されて永続記憶になります。眼球が激し動くレム睡眠時に記憶の確認が行われているものと思われます。ノンレム睡眠時は大脳皮質へ記録されている状態だといわれています。生命にとって重要でない記憶は大脳皮質に弱い情報として記憶され、時間と共に消えていきます。
ところが危険と判定された情報は扁桃体情報と共に大脳皮質にしっかりと格納されます。生き延びるために。
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レム睡眠時眼球が動く |
睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返しています。レム睡眠では眼球が激しく動き、1日の体験を脳内に再現しているのでしょう。
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付加された扁桃体情報を削除しなければ解放は無い |
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生き延びるために重要な扁桃体情報、しかしトラウマを引き起こす元凶ともなれば、見逃すわけにはいきません。幼少期の虐待体験などはトラウマを引き起こす代表選手。大人に頼らなければ生きてゆけない子供にとって身近な家族などから受ける虐待ほど恐ろしいものはありません。
また自分以外の大切な人に対して為される暴力もまるで自分が受けているような感覚になり、その情景は扁桃体の危険情報が付加されて記憶され、トラウマの原因になります。
精神科でコンサルを受けてトラウマを克服しようにも扁桃体情報を人為的に削除することが出来ないので治療が終わりません。
結局、トラウマからの完全なる解放は扁桃体情報を削除できるかどうかにかかっているといえます。
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トラウマからの解放は |
トラウマからの完全なる解放は扁桃体情報を削除できるかどうかにかかっているといえます。 |
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